「ジュリアお姉様、気が付かれたのですね。」


次に入って来たのは恐らく私の妹だ。
ジュリアの母親はジュリアがまだ5歳くらいの頃に病死している。
その後妻である母親の娘がこの妹だ。
確か…名前は…。


「…ミシェル?」


「はい。お姉様、私は妹のミシェルです。お父様が記憶を無くしたようだと言っていたので心配していましたが、覚えていてくださったのですね。」



確かこのミシェルの企みで婚約を破棄されてしまうのだ。
私はこの国の王太子の婚約者で、ミシェルは自分が王太子と結婚したいために、私を罠にはめて婚約破棄させる話だったはず。

半信半疑だったが、妹の登場であの小説に間違いない事が確定した。

外出から帰って来て玄関で倒れたと父親は言っていたが、それも妹と共謀したメイドが何かの毒薬と魔法を使って私に浴びせたことで気を失う場面があった。


ミシェルは輝くブロンドの巻き髪で、ブルーの瞳を持つ美少女だ。
それに引き換え、ジュリアは母親譲りでストレートの黒髪と黒い瞳を持っている。
この国では珍しい色であり、中にはそのエキゾチックで不思議な魅力に悪魔に取り付かれた娘と陰口を言う者もいた。
しかし、ジュリアは母と同じ色の髪と瞳だったことを嬉しく思っていた。
幼い頃の僅かな記憶だが、母の優しいその表情を思い出すのだ。