「アレックス様、義母とミシェルをいつからお疑いだったのですか。」


アレックス様はフッと小さく笑った。


「今日、貴女がこの城に来る前から疑っていましたよ。」

「な…なぜ…ですか。」


すると、アレックス様は自分の後ろにいたメイドに声を掛けた。
メイドは返事をして私のほうに近づいて来た。


「あ!あなた…最近うちに来てくれているメイドの…ベネットじゃない!」

「はい、ジュリア様、ずっと隠し事をしてしまい申し訳ございません。私は王太子様よりハーベスト家を探るように言われて伺っていました。」


驚いたことに、ベネットという女性は最近ハーベスト家で働き始めたメイドだったのだ。
まさかアレックス様がハーベスト家に送っていた女性とは思っても見ない事だった。


「ジュリア嬢、貴女を騙すような事をしてすまないと思っている。許してくれ。ただ、ハーベスト家は以前から義母や妹君の悪い噂を聞いていたんだ。それで調べてみようと思ったんだ。」


「そ…それで義母達を疑ってくださったのですね。」


アレックス様はふわりと笑ってジュリアの頬にそっと触れた。


「ジュリア嬢、いろいろ家族の中で苦労があったようだね…今までよく頑張った。」


私は転生前からこんなにも優しい言葉をかけてもらったことが無い。
アレックス様の言葉に自然と涙が溢れて頬をつたう。

私を認めてくれる人がいた。
それだけでもう良いと思ってしまう。

たとえ死んでしまう運命だとしても、幸せだと思ってしまうのだった。