私は夢を見ていた。
それはこの世界に転生する前の自分の夢を見ていた。
今日も仕事を押し付けられて、帰れそうもない。
諦めて残業を始めたところだったのだ。


すると、どこかで私を誰かが呼ぶ声がする。


「ジュリア…ジュリア嬢…」


あれ…私はまた寝てしまったのかしら。

瞼が重いが、ゆっくり目を開けて見る。
すると、そこは会社のオフィスではない。


「ジュリア嬢!目が覚めたか!」


アレックス様が私の手を握っている。


「あの…私…残業していましたよね?」


私の言葉にアレックス様は不思議な表情をした。


「ジュリア嬢、大丈夫ですか?ここは城の中でもう大丈夫です。…残業、とは何のことでしょうか。」

ここは私がいた会社ではなく、転生した世界だった。
夢だと思っていたこの世界で、会社の夢を見ていたようだ。

頭がぼんやりとしていたが、少ししてやっと思い出した。
私は義母にどこかへ連れ去られそうになっていたところを、城の騎士たちに救ってもらったのだった。


「アレックス様!助けてくださったのですね。」


「ジュリア嬢、思い出してくれたようですね。よかった。」