私は何かの布を口に当てられて、猿ぐつわを嚙まされてしまったのだ。

そして黒装束の一人が私を抱えると、自分の馬に乗せたのだった。

「ウッ、ウウーッ、ウッー!」

声を出しても言葉にならない。
私を乗せた馬はそのまま走り始めたのだった。

馬が走り少ししたところで、男たちは馬をなぜかいきなり止めたのだ。
そして私を馬から降ろすと、皆が一斉に被っていた黒い布と黒装束を脱ぎ始めた。


なんと、男たちは黒装束の下に騎士のような服を着ていたのだった。
その服はどこかで見覚えがあるものだ。

その中の一人が私の口から猿ぐつわを取り、その場で跪いたのだった。

何が起こってしまったのか分からない私は声も出ない。

その跪いた騎士が頭を下げて話し始めた。


「ジュリア・ハーベスト嬢様、多大な失礼をお許しください。」


「あ…あの…どういう事…でしょうか。」


私は全く意味が分からない。
すると、その騎士がさらに説明を始めた。


「私達は王太子様の命を受けて、ジュリア様をお助けに参りました。王太子様は馬車がハーベスト家の方向に向かわなかったときは、賊のふりをしてジュリア様を連れ出すよう命じられていたのです。」


なんとアレックス様は、義母達のことを疑ってくれていたのだ。
それを聞いた途端に私は足の力が抜けて、パタンと座り込んでしまい、張り詰めた糸が切れたようにそのまま気を失ってしまったのだ。