大変な事になってしまった。
このままでは私はどこかに連れて行かれてしまう。
しかし、走っている馬車から飛び降りたら、護衛騎士に止められるだろう。
どうしたものかと考えていた時だった。

“ヒヒーン、ヒヒーン”

馬車がガタンと揺れたと同時に馬の鳴き声が聞こえた。
どうやら馬車を急停止させられたようだ。

馬車のカーテンをそっと開けて見ると、護衛騎士が黒ずくめの装束を着た数名の男たちに襲われている。
そして、見る見る騎士たちは倒されて気を失ってしまっているようだ。

これも義母のたくらみなのかと顔を覗いて見ると、顔が青ざめてカタカタと震えている。
本当に恐がっている様子だ。
ミシェルは義母に抱き着いて涙を流し始めた。

この様子からすると、予定外に馬車が襲われてしまったらしい。

やがてその黒装束の男たちは、私達の乗っている馬車へと近づいて来た。

黒い布を頭から被り、顔も見えないように目元以外を布で全て隠している。
この者達は誰なのだろうか。

その男達は誰も声を出さず、不気味に馬車のドアに手を掛けたのだ。

そして、ドアの鍵を壊して力ずくで開けると、なぜかジュリアだけを狙って腕を掴んだ。
とうとう私は馬車を引きずり降ろされてしまったのだ。

ただ不思議と妙に私の頭の中は冷静だった。
考えてみたら、私はどうせこの義母達にどこかへ連れて行かれてしまう途中だったのだ。

それが少し予定外に早くなっただけと思えばあまり変わりはない。