アレックス様のはからいでジュリアはこの後、実家であるハーベスト家に戻ることとなってしまった。

しかも、さらに悪い予感がしたのは、唯一ジュリアの味方であるお父様は、他の侯爵達と今日のお祝いとのことで、飲み明かすと言っているらしい。

嫌な予感しかない。

帰りの馬車は、義母とミシェル、そしてジュリアの3人で一緒に乗ることになってしまった。

アレックス様は城の門まで見送りに来てくれた。

「ジュリア嬢、こちらのことは気にしなくても良いから、家族とゆっくりしてくると良い。」

できる事なら引き留めて欲しかった。
しかし、アレックス様のせっかくのはからいを断ることもできない。

そして、私達3人を乗せた馬車のドアが閉められた。
すると義母とミシェルの表情が一変する。
まるで鬼のような表情に変わったのだ。
ミシェルにおいては薄笑いを浮かべて不気味である。

私はどうなってしまうのかと不安になり声をだした。

「お義母様、私をどうして連れて帰るなどとおっしゃったのですか?」

義母は表情も変えずに応えた。

「あなたを家に連れて帰らないわよ。これからあなたに失踪してもらうわ。」


「な!…何をおっしゃっているのですか!」


さらにミシェルが楽しそうに話し始めた。


「心配しなくても大丈夫よ。あなたがいなくなったら、私がお姉様の代わりに王太子様と結婚するわ。」