これでなんとか婚約発表パーティーを無事に乗り越えたと思ったが、まだ終わりでは無かったようだ。

婚約発表が済むと王太子妃となる婚約者は、お妃教育のためお城に滞在することになる。
住み込みでお妃教育を学ぶと言うことだ。

当然私も今日以降はお城に滞在する予定は聞いていた。

パーティーがお開きになると、アレックス様とジュリアのもとに、妹のミシェルと義母が近づいて来たのだ。
しかも気持ち悪いほどの微笑を浮べている。

先に話を始めたのは義母だった。

「王太子様、本来ならジュリアは本日よりお城でお世話になることと思いますが、どうか一日だけ猶予を頂けないでしょうか。」

アレックス様が怪訝な表情で返事をする。

「猶予?猶予とはいったいどういう事なのだ。ジュリア嬢をハーベスト家へ帰らせると言う事か。」

「はい…我儘を承知でお願いしております。大切な家族であるジュリアと離ればなれになるのが、悲しくて仕方ないのです…ですからもう一日だけゆっくり家族で過ごすことをお許しいただけないでしょうか。」

その話を聞いて、私は驚きのあまり声も出なかったのだ。
今まで私を嫌って話もしなかった二人がなぜそのような事を言い出すのだろうか。

アレックス様は二人の話を聞いて頷いている。

私は慌てて声をだした。

「そ…そんな我儘は、王室に対して失礼です。」

絶対になにか裏があるはずだ。
しかし、小説にはこんなイベントは無かったはずだが、どういうことなのだろう。
私が嫌がらせを阻止したので、物語の内容が変わってきているという事なのだろうか。
どちらにしても嫌な予感しかしない。


義母の話を聞いていたアレックス様は、少ししてミシェルと義母に向かって微笑んだ。

「大切なご家族と離れるのは寂しいものだな。1日くらい問題ない。今日はジュリア嬢が一緒にハーベスト家へ帰れるよう、私が皆に話をしておこう。」