「彼が帰国してから、図書館やパソコンで色々調べたけど、バシレイヤ国もアンタリア・ヘーリオスという名前も、全く皆無だった…
私は彼に騙されたんだ、捨てられたんだと思った。その時は柄にもなくかなりショックを受けて、それで体調を崩したのだと思っていた。
まさか自分が妊娠していたなんて微塵も考えていなかった…
体型も全然変わらなくて
でも、貧血が続いていから、念のため受けた検査で初めて妊娠していることを知ったわ。
自分を捨てた人の子なんて産みたくなかったのに
もう堕胎出来る時期を過ぎててどうしようもなかった。
出産は夏休みで、学校も何とかなって、生まれた子供は施設に預ける予定だった…
でも生まれてきたあの子をこの腕に抱いた時、
私の指をギュッと握って、それが愛おしくて堪らなくて、涙が止まらなくて…
どうしても手放すことが出来なかった。」