「彼の名前は、アンタリア・ヘーリオス…
高一の夏休み明けに、留学生として私のクラスにやって来た。
その時クラスの委員長だった私が彼の世話係になって、直ぐに仲良くなった。

彼は日本の文化を学びたいと言っていた。
日本語がとても上手で、人懐こくて、紳士的で、ユーモアもあって…
お互い惹かれていくのに
そう時間はかからなかった。

彼が留学期間を終えて、国に戻る時、初めて彼が
バシレイヤ国の王子だと聞かされ、そこは北にある閉鎖された小さな小さな独立した国だと言っていた。
だから王位に就く前に、色々な国の事を知っておきたかったって…

私の事、凄く真剣に、大切に思っているから一緒に来てほしいって言われたわ。

…でも、まだ高校生で、確かに凄く好きだったけど、そんな全く未知の世界に飛び込む勇気はなかった…。」

一息付くように、フゥと息を吐いて微笑んだ那智さんの顔はどこか淋し気で、当時の彼への思いの深さが垣間見えた気がした。

再び彼女は話し始めた。