大事になっていることに
驚いて、申し訳ないと頭を下げる那智さんに

「いいえ、凛にちゃんと話さなかった自分にも非があるし、どのみちこうなるように仕向けられていたんだと思います。
だから気にしないで下さい。」

そう告げると、那智さんは、「仕向けられていた…」呟いて、何かを思い出したように

「じゃあそのカイとかいう人ね。健と昔付き合っていたことを知った上で、私に凛と貴方が付き合っているとか、健の住所を教えて、ああなるように仕向けたのは…

そして私はそれにまんまと乗せられたってわけね。」

大きく溜め息をつきながら頭を左右に振る那智さんに

「それで、凛の父親の事教えて頂きたいんです。」

そう言うと那智さんは、コクリと頷き、静かに立ち上がると、奥の部屋へ入って行き、戻ってきた手には黒い革の手帳が握られていた。