ふと見た那智さんは淋し気にフッと笑って
「一番嫌いな人間か…」
そう呟いた言葉が耳に入ってきた。


知った事実に言葉が出てこなかった…
凛に、那智さんの事を話さなかった後悔が溢れ出し、全身を包み込んだ。

「凛、話しを聞いてくれない…」

最後の言葉が出る前に

「もういい…
もういいよ、健
私見たんだ、あの日学校から健とこの人が車に乗って出掛けるの…
その後も何度も会っていたんでしょ?

健が話してくれなくても信じていたから、それでいいと思っていたのに…

何でイブの日に、健の部屋にこの人がいるの?

やり直すって何?

何でこの人なの!」

目を閉じ最初の一言を発すると、静かに瞼を開け、その瞳からは涙が後から後から零れ落ち、声は震えて、最後の言葉はかすれていた。