「今、君と会うたびに思い出すのだろう。君と初めて会った時のことを……」
そんな感じで歌いだした。イメージ通りのかわいらしい声だと思いきや、意外にも低温のしっかりと芯の通った声だった。女性版イケボと言ったところか。
「いい声だな」
と、間奏の間に未来に伝えた。
「ありがとうございます!」
「いや、そんな感謝しなくても」
ただ、感想を言っただけだし。
「やっぱり優しいですね」
「普通のことだよ」
そして二番が始まり、そのまま未来が歌い終わった。
「お疲れ様」
と、熱唱し終えた彼女に言葉をかける。
「久しぶりに歌ったわー」
「ん? いつも友達とかと歌ってるんじゃないのか?」
「そんなこと言わないでよ。私そこまでカラオケ行ってないよ」
「へー、陽キャはいつも行ってるもんだと思ったんだけど」
「私陽キャじゃないし」
「男子にモテモテなくせに?」
「だってモテても意味ないし」
と、軽く悲しそうな顔をした。モテる人にはモテる辛さがあるのかな?