そして、その気まずい関係は、新年度が始まっても続いている。私のクラスはエスカレータ式で上がっていく。つまり、クラスも一緒なわけだ。
 気まずすぎて本当に分からない。
 こんなことになるくらいだったら、ドッキリなんてしなければよかった。
 だが、今頃後悔したところで遅い。私には時を戻す能力(ちから)はないのだから。


 気まずいというのは彼も分かっているみたいだった。私の目を見ようとはしない。

 この状況は私にとっても彼にとっても良いものではない。早く、この状況を打破しなければ。

 そんな時だった。「ごめん。少しいい?」と彼が話しかけてくれたのは。

「どうしたの?」

 本当は歓迎するような形で返事をしたいのだが、気まずいので冷たい言葉しか出てこなかった。その言葉で、彼が少しビビっている。
 申し訳ない。

「この前はエイプリルフールの嘘なのに一人盛り上がっちゃってごめん」
「いや、こっちこそ。変なドッキリを仕掛けてごめんなさい」
「俺は……舞い上がっちゃったのは悪いと思っている。でも、それくらいお前のことが好きなんだ。喜久子。だから俺と付き合ってくれ。分かっている返事は」
「うん。付き合うことは出来ない。だって、友達としてしか見れていないから」

 あれから幾度も考えたのだが、異性として見ることは出来なかった。

「でも、友達の延長上で付き合うのならいいよ。その過程で忠君のことを友達としても好きになるかもしれないし」
「分かった。絶対に好きにさせるから。覚悟しといてよ」
「うん! 私を楽しませてね」