窓の外を見れば、綺麗な空。笑顔で走り回る子供達。幸せそうにお互いを見つめるカップル。
全てが私にとって憧れの景色。私は治せない奇病を患っていた。物心つく頃にそう長くはないと言われた。不思議と辛くはなかった。悲しくもなかった。
物心ついた時から病院の天井を眺める毎日。死ぬのが怖くはなかった。でも、今は死ぬのが怖い。
窓が優しくノックされ、窓の方を見ると彼が居た。
私は、彼が好きだ。彼も私を好きだと言ってくれた。
そんな彼が居るから死ぬのが怖くなってしまった。
彼と出会わなければこんなに辛い感情を知ることは無かった。彼のせいで私は泣いてしまう。彼は私の病を知らない。「早く治るといいね」「治ったら、とても綺麗な景色を見せてあげたい。」楽しそうに語る彼に、病を伝える勇気が無かった。
いつものように彼と話していると、医師がやってきて大事な話があると言われた。私はその一言で予想がついた。
医師の放った言葉は、予想通りだった。
この日が来ることは分かっていた。なのに涙が止まらなくなってしまった。医師達は初めて病気で私が泣いたところを見てとても驚いていた。
落ち着いて病室に戻ると、彼は居なかった。
数日後、彼は私のところにやってきた。今までとは違う、窓より内側に彼は居た。私の顔を見ると彼はいつものように優しく微笑んだ。この数日で私は容態が急激に悪化し、1週間も無いと言われていた。
彼もその事実を知ったのだ。
私は心から彼が好きだ。彼も同じ気持ちだ。
彼は私の病を知った時、涙が溢れてしまったと笑いながら言った。私の「めいっぱいおしゃべりしたい」というわがままに彼は快く承諾してくれた。私が話している時、彼はずっと笑顔を絶やさなかった。
次の日に私の容態はさらに急激に悪化した。
医師達は大丈夫と励ましてくれたけど、
私にはもうこの命が役目を終えようとしてるのがわかっていた。彼が来る頃には私の意識は朦朧としていて、そんな私を見た彼はずっと横に居ると言ってくれた。
「私ね、あなたと出会う前までは死ぬのがちっとも怖くなかった。綺麗な空の下を歩いて、友達と笑いあって、普通の人と同じ恋をして、幸せに過ごすのが私の憧れだった。私ね、何度も思ったの。あなたと出会わなければこんな辛い気持ちになること無かったのになぁ…って。でも、今は違うの。
私、あなたに伝えたいことがあるんだよ。前にあなたが私に『心から幸せだよ』って伝えてくれて、すごく嬉しかった。私も今なら胸を張って言えるよ。
私も心から幸せでした。」意識が遠くなっていく中で、彼は私の頭を優しく撫でてくれた。彼の手は大きくて、温かかった。
「私..だけが.......辛くて......泣いて..た....と思っ...てた.......。けど...泣......かせて..たの........私..だった.........。
ご......めん........なさい.........。あり.......がとう........。」