「もう卒業近いのに、マジでどうしよ。告白は無理かもしれないけどさ、せめて仲直りしてから学校去りたいんだけどな…」


立場上を良くする愛想のいい郁人でも、人を嫌って冷たくする郁人でもない、第3の郁人を斉藤のことを話す時時々見る顔。


切なくて、悲しそうで、悔しそうで、けど泣けなくて。


そんな色んな気持ちが入り混じった郁人の顔を、こうやって俺はたまに見かける。


「…っ」


自分のことじゃないのに自分のことかのように思うと、胸が痛めつけられるほど苦しくなる。


似たような気持ちを自分も知っているから。


「……なんて悩んでたって仕方ないよね」

傷ついている悲しみを誤魔化すように、愛想よく振る舞って、何事もなかったかのように笑う郁人。


親友なのに、自分が“また”無力なことを思い知らされ、虚しく感じた。


「話、変えるけどさ、…桐生って本当は春乃さんのこと好きなんでしょ?」


「!」


「何で断るのかな〜と思って。しかも嫌いって言うほど。せっかく両想いなのに」


「……それは、」


「……やっぱり、“あれ”?…“あおくん”」


「!……」


「春乃さんも、桐生が思うほどのこと思ってないよ。きっと。確かに変わっちゃったけどさ」


「……」


「そろそろ卒業なんだよ。正直に話してちゃんと言いなよ。


…俺みたいに後戻り出来ないようなこと、なってほしくない」


八の字をした郁人は、まるで俺を後押しするように、忠告するように、俺に告げた。


「……」


その時、ふと1年前のことが蘇ってきた。