恋は、母親と二人でクラシックのコンサートに来ていた。


　真っ暗な中に浮かび上がる楽器は、どれもきらきらして見える。


　恋は、宗介と䄭風の事を考えていた。

　近頃宗介は䄭風を警戒していて、䄭風と恋が近付かないように見張っていたし、恋が䄭風の話をするとあからさまに嫌な顔をした。

　宗介が良いと言ってくれれば、恋は䄭風とも仲良くして、取り合われないまでも微妙な関係を保っているつもりだった。






────樋山くんが諦めたら。






　䄭風さえ諦めてくれれば、事態は解決する。


　䄭風に他に好きな人が出来る所を想像すると、ちょっと胸が痛く、恋は、自分は狡い奴なのかなあ、と考えた。


　暗いホールの中でで宗介や䄭風の事を思うと、二人がより近しい存在に感じられた。


　演奏が終わって、舞台の演奏者達が立ち上がって挨拶すると、会場を包む大きな拍手は、いつまで経っても鳴り止まなかった。