䄭風と恋のデート事件があってから、宗介は不機嫌だった。

 宗介は恋と䄭風が話す隙を与えないように、力を入れて見張っていたが、そうはいっても、同じクラスなので、2人は嫌でも顔を合わせてしまう。



 教室。朝のホームルーム前。

 恋と理央が話していると、䄭風がやって来て、声を掛けた。



「新田さん」

「あ」

「あ、樋山くん」



 理央がちょっと首を傾げた。



「新田さんの意気地なし。あの新聞の後から僕とちっとも喋ってくれないんだ。」

「ごめ……」

「樋山」

「あ、上野くん」


 
 後ろから宗介が現れて、䄭風を睨んだ。

 䄭風は冷たい表情をしている。



「何」

「……恋に近づかないでくれない?」



 宗介が笑顔で首を傾げて言った。



「断る。」

「うざ。断らねーよ。そいつ、」



 宗介は恋を指した。



「僕の彼女なんだけど。知っての通り。」

「認めてない。」

「お前が認めるとか認めないとか関係ねーんだよ。僕のものは僕のもの。ちょっかい超要らねーんだよ。」

「……」

「お前、目障りなんだよね。」



 しんとした教室の真ん中で、一触即発。

 宗介は低い声で、不自然な笑顔を作った。



「宗介……」

「恋、お前は。」



 宗介は言葉を切った。



「ふらふらしないの。ビンタ食うよ。この間みたいに。」

「新田さんを殴ってんじゃねーよ。」



 䄭風が低い声で言った。



「僕の勝手だろ。うぜえんだよ、お前。」


 宗介が䄭風に顔を近づけた。

 次は手だ、と恋が目を瞑ったたところで、運良く丁度チャイムが鳴った。