新聞部の部室。


「それじゃあ、樋山くんは新田さんを絶対に諦めない、という事でまとまっているのね?」


 縦長のテーブルについて、伊鞠がボールペンでメモを取る。



「上野くんは新田さんと幼なじみで昔から結婚の約束をしていると噂があるけど、それに対してあなたはどう思う?」

「嫉妬でどうにかなりそう。でも僕が居るから、そううまく行きっこないですよ。」

「そう。前回のデートで、何か収穫はあった?」

「ありましたよ。新田さんがそこまで上野のこと好きじゃないって知って、嬉しかった。早く別れてくれれば良いのにと思ってます。」



 テーブルに頬杖をついた䄭風は、伊鞠の質問に次々と答える。

 伊鞠はメモを取りながら、ハイライトなネタに印を付けていく。



「新田さんは、名言を避けているけど、ずばりあなたと上野くんどっちを好きなのかしら?」

「僕……だと良いなと祈ってます。新田さんはどっちつかずだから、たまにイライラする。僕のこと嫌いなら嫌いでそう言えば良い。そんな訳ないけど。」

「そう……今日はここまで。前回の記事に、小さくだけどブランコの写真を載せておいたわ。協力ありがとう。」

「いいえ」


 伊鞠が言った。


「デートで話題になっている最中に取材に協力するなんて、どういう風の吹き回し?」


 䄭風は冷めた表情で言った。


「僕はただ、情報を圧力にするために、新聞を使おうと思って。活字はインパクトがあるから、新田さんに響くかもしれない。」

「そう祈ってるわ。中立は中立だけど、メインのイケメンが記事に協力的なのはありがたいから。」

「使うは使うけど、はっきり言って全部僕らのプライベートなんで、取材、どうかと思いますよ。仕事熱心は尊敬するけど、ちょっと軽蔑します。」

「よく言われるわ。喜ばれる記事を書くために、必要なのは熱意と大胆さよ。私には両方揃ってる。」

「自分で言うんですね。」

 䄭風は挨拶をすると、冷たい表情のまま部室を後にした。