フードコートは混んでいた。

 あちこちに恋達の様な学生のカップルが居て熱心に話し込んでいる。


「もし君が僕より上野が良いって言ったらどうするか、考えてきてる。」


 ベーコンとレタスのバーガーを食べながら、䄭風が言った。



「君が僕って言うまで一生離れない。それが僕の作戦。」

「困るよ……」

「新田さんは上野を選ぶなら困るべきだよ。いつまでも両手に花なんかさせない。時々、」



 䄭風は言葉を切った。



「新田さんの事を思いっきりひっ叩く想像をする。新田さんは上野に泣きつくんだけど、上野も打つんだよね、その中では君のこと。ダブルビンタっていうんだって。」

「……。」

「嘘でしょって言いなよ。嘘だから。」



 ぞわんとした恋に䄭風がさっくり言った。



「恋人を打つ想像なんか絶対しないよ。好意の強調。言っただけ。」

「だよねえ。」

「たまに本当に引っ叩いてやりたくなるけどね。」

「……」

「嘘だよ。何で怖がってんの。好意の強調だって言ってるでしょ。」



 䄭風は心底呆れたという顔をした。



「あのさ、恋人を打つわけないよ。てのひらの上で、守ってやって、温めたい。僕はいつも君をそうだよ。」

「……」

「どうして上野なのかなっていつも考える。僕は絶対幼なじみだからっていうのに行き着くんだけど、幼なじみって変わらないし。あーあ。」



 䄭風は、手を伸ばしてひょい、と恋の分のナゲットを掴むと口に入れた。


「味見。」


 そう言って䄭風は笑った。恋も釣られて笑った。



「今日は楽しかった。新田さんもつまらなくはなかったでしょう?。」

「うん。」



 と、その時。

 恋と䄭風の後ろで、どこからかパシャリ、と音がした。

 恋は音に気付いて振り返ったが、後ろにはただ静かなフードコートが広がっているだけだった。





────気のせいかな?。





「新田さん、早く上野と別れて付き合ってよね。僕と。」


 ニコ、と微笑んだ䄭風に恋はたじたじで、しどろもどろに今日はありがとうを言った。