隣町の大型ショッピングモール。

 昨日、店まで別々でなら、と言うと、䄭風は二つ返事で承知した。

 今日恋は、䄭風とフードコートで食事をする事になっていた。

 手持ち無沙汰に、ロビーのベンチに座ると、入口のガラスに白いシャツを着た自分の姿が映っている。





 間もなくして䄭風がやって来た。

 䄭風は白いTシャツに白いパーカーを羽織っていて、歩いてくるところは雑誌モデルか何かの様に見えた。

 ベンチの恋の姿を見ると䄭風は大股で歩いて来て、テーブルに屈んでにこっと笑った。


「新田さん、今日は何見ようか。」


 䄭風が言った。



「一緒に洋服を見ても良いね。買ってあげるよ。親がフィアンセになら買っていいって言ってるんだ。」

「ええ、いいよ」

「遠慮しないで。僕が買ってあげられるのが嬉しい。新田さんに僕好みの服を着せられるのもね。」



 二人はエスカレーターで二階の洋服屋の並びに行った。



「ここ、広くて涼しくて、僕は好き。」


 店の並び歩きながら、䄭風が言った。



「新田さんに意地悪言おう。上野と来たことがあるんだってね?」

「うーん、たまに来るよ」



 恋は繋いだ手をきまり悪そうにしながら言った。



「ここ、西中生徒のデートスポットだし。」

「確かにね。見るもの何でも揃ってる。映画館もあるし。新田さん、上野と映画見たりする?」

「時々」

「サプライズに、今日は映画でも見ようか。」



 䄭風が言った。


「同じものを見るって、カップルの基本だよ。僕最新の映画情報調べて来てる。」







 恋と䄭風は最上階のシアターに行った。

 頭上に大きな広告があるシアターには、人がほとんど居なかった。

 チケットを買って中に入ると、館内は薄暗い。

 感動もののストーリーの映画のラストに恋が涙すると、䄭風はくすくす笑って隣から屈んで恋の額にキスした。

 䄭風のハンカチを借りて涙を拭いながら、恋と䄭風はシアターを出た。