学校から帰って恋が宗介の家に行くと、宗介の家では、珍しく宗介の母親が、ダイニングで縫い物をしている所だった。



「あら、恋ちゃん」


 宗介の母親は言った。



「宗介、早くお茶出してあげなさい。喉渇くでしょ。暑いんだから。」

「分かってる」

「恋ちゃん、宗介、この頃どうかしら?。二人付き合い出したっていうけど、うまく行ってるかしらね?。」

「母さん、放っといて。」



 冷やかす様な口調に、宗介は怒り笑いをした。



「聞いたらもう1人、ライバルが居るんだって。恋ちゃんは取り合いね。おばさんうちのを選んで上げて欲しいな。」

「余計なお世話。恋とはうまく行ってる。だよな?。恋。」

「えっ、うーん。」

「何かこの間、その人おっかない事言ってたわよ。もし僕を選ばなかったら傷付くように捨ててやるんだとかなんとか。恋ちゃん、そういうの、どう思う?。好きって思ってくれる?。」

「母さん、黙ってくれない?。もう放っといてよ。人のことからかわないで。」


 宗介は怒り笑いのまま急須を取ると、氷を入れた3つのコップにお茶を注いだ。


「そうそう、宗介、今日出かける予定ないわよね?」


 自分の分のお茶を取りながら、宗介の母親が言った。


「なんで?」

「おつかい。お小遣いあげるから。スーパーでお醤油買って来て欲しいのよ。」

「はあ?」

「恋ちゃんも行くでしょう?。帰りに何か食べたい物買って来て。後で食べればいいわ。」

「別に僕は行ってもいいけど。行く?。恋。」


 宗介が聞いた。



「うん」

「恋ちゃん、何が食べたい?」

「……ホットケーキ。」

「あら、家で作るのね。良いわよ。二人で行ってらっしゃい。牛乳とシロップ買うの忘れないようにね。」


 恋は頷くと、コップを両手で持って、お茶を一口飲んだ。