ある日のこと。

 教室で、恋と理央と明日香は、たまたま好きなお菓子の話をしていた。

 一番好きなお菓子の話になって、恋がキャラメルを好きだというと、明日香がええっと驚いた声を出した。


「そんなに意外?」


 恋は、きょとんとして聞いた。


「意外っていうか、キャラメルかあ。」


 チョコレートを一番好きだという明日香は、ポテチを好きだという理央に、どう思う?と聞いた。



「キャラメルも良いよね。甘さたっぷりで、幸せな気分になる。」

「普通チョコレートだよ。キャラメルってなんかベタベタしたイメージない?」



 明日香が続けた。


「っていうか少数派だよ。チョコ好きな人多いもん。」


 恋は、キャラメルの何が悪いんだ、と抗弁した。

 恋は実はキャラメルが大大大好きだった。

 あの色も、匂いも、食べた感じも、全部が好きだった。

 ムキになって言い返す恋に、明日香は微妙顔で続けた。



「だって、恋。キャラメルなんかネバネバするよ。」

「ネバネバしないよ。」



 恋は怒った顔で言い返した。


「いいやネバネバする。テレビのアンケートでも見たこと事ある。普通はみんなチョコだよ。」


 そんなことない、と繰り返した恋に、明日香は呆れ顔をした。


「分かるけどさ。まあまあおいしいけどしつこい、甘さが。甘過ぎて。恋、さっきから、何怒ってんの?。」


 恋が、明日香なんかともう口聞かない、と捨て台詞を吐くと、明日香はとても驚いた顔をした。


「えええ、ねえ、恋、何をそんな怒ってんの?」


 恋は、明日香を無視して、1人教室を出た。