お点前はゆっくりと始まった。

 顧問の先生は外から通ってくる免状のあるお婆さんで、こちらも上品な着物を着ていた。

 お作法通り、お茶を点ててから順番通りお菓子を頂く。

 昔お茶を習った事があるという宗介と䄭風は行儀良く、慣れた動作の様に優雅にお茶を点てた。


 恋達が部活動をしていると、開いた戸の向こうの方から、茶色い髪のポニーテールとおかっぱ頭のメガネ、新聞部の伊鞠と桂香が歩いてやってくるのが見えた。

 同時に宗介がかなり苛立った笑顔をして、䄭風がお皿の和菓子をしらけた目で見つめたので、顧問の先生は2人を不思議そうに見た。


「いらっしゃい」


 先生に迎えられて、伊鞠と桂香は、新聞部の挨拶をしてから、和室にあがって、宗介と䄭風と恋にシャッターを切り始めた。

 他の生徒たちも居るのに、カメラを向けられたのはなぜか宗介と䄭風と恋だけだった。



「いい加減にしてください」

「左に同じ」



 宗介が伊鞠たちを睨み、䄭風が冷めた目で言った。


「あら、心外。新聞部は仮入部の報道もするのよ。」


 伊鞠が済まして言った。



「この間みたいに、おかしな使い方しないでください。ほんっと腹立つ。迷惑なんですよ。」

「僕の写真使って、変なこと書かないでもらえません?。不快です。」

「ちょっと新田さんに絡むだけよ。」

「困ります。そのちょっとが嫌なんですよ。恋、言え。」

「迷惑というか……」

「ところで新田さん。」



 伊鞠がいきなり話を変えた。



「時にこの2人の袴姿をどう思って?」

「……シャッターチャンス」



 桂香がぼそりと言った。



「どうって……」

「こ・れ・は写真入りの記事にするしかないのよ!。ええ、絶対にそうしますとも!。体育祭の時みたいに引き伸ばして、一面記事の真ん中に貼るしかないわね。」

「いや……」



 テンションの高い伊鞠についていけない恋は、ただ一応愛想笑いをした。


「質問を変えるわ。」


 伊鞠が言った。



「新田さん、あなた、この三角関係でずばり今後浮気の予定はおあり?」

「そこまで。」



 恋が応える前に、宗介が立ち上がって恋の前に出た。



「恋に絡まないでくださいって前にも言ったでしょう。正直目障りなんですよ。先輩方。」

「僕からも。」



 䄭風が言った。



「新聞部でなぶりものにされて、教室まで僕達を見に来る奴居るんですよ。迷惑ですよ。」

「迷惑?あらあら。」



 伊鞠が言った。



「スター冥利に尽きると思いなさいよ。」

「……和服アイドル」



 桂香が恋を見てぼそりと言った。


 伊鞠と桂香は帰らなかった。

 2人はそれから取材と称して3人をつつき回したので、宗介と䄭風のイライラは続いた。