「な、なんで栗山くんいるの?もう帰ったんじゃ」


「お前、さっきのやつが好きなわけ?」


「…え、わ、私は…」


図星をつかれて、私は言葉を濁した。
動揺が隠せなくて、視線が落ち着かない。


「ふーん、ビンゴか」


「ち、ちがっ、んっ!」


いきなり腕を引かれて、唇に何かが触れた。


目を閉じた栗山くんが、ドアップに映っている。


さっきまで無意識にしていた呼吸の仕方を忘れてしまったように、息ができない。


頭が麻痺して、何が起きているのかすぐには理解できなかったけど、私は力強く栗山くんを押し返した。


「…今、なんで」


「生意気な口きくお前が悪い」


呆然と立ち尽くす私を、全く悪びれる様子のない栗山くんが見つめている。