「…………いらっしゃいませ。
今日もアナタですね」


「ふふ。今日も今日とて寂しい店ね」


「え、笑ってんの珍し。
じゃあ今日は……?」


「いつもの」


「あー……はい」


「夢をみたわ」


「どんな?」


「全部が泡になって消える夢」


「へぇ。よかったやないですか」


「悪夢よ」


「……まあ、そうでしょうね」


「目が覚めるとね、真っ白だった。
ほんとに何も残ってなかったの。
昨日のアルコールさえも」


「薄めた甲斐ありましたね」


「ねぇ、おかわりちょうだい」


「え、ペースはや………って。
全然飲んでへんやないですか」


「いいの」


「……わかりましたよ。ギムレットね」


「ちゃうよ」


「!」


「"x.y.z"」


「……そんなんもう、一生逃しませんよ」