「いらっしゃい………
って、今日もアナタですね」


「どうも。
今日も今日とて寂しい店ね」


「………いつもの?」


「うん。
良いニュースと悪いニュースもってきた」


「唐突っすね」


「結婚する」


「え…………う、うそ。
…………誰が?」


「彼。
あ、『元』つけるの忘れてたわ」


「………それは良いニュースのほうですか」


「それで、もうひとつのニュースっていうのはね、」


「答えてくれへんのや」


「『生涯独身』を誓い合った親友も、結婚するんだって」


「ちょ、ほんま。どっちなんですか」


「いつまでも子供のままじゃダメってことかな」


「………そうですよ。次にいかんと。
せっかくそんな綺麗やのに」


「あら、上手いのね」


「本心やからね」


「次なんてあるかしら。
ビルまみれで、夜景が綺麗なだけのこんな街じゃ、
素敵な出会いなんてないもの」


「職場は?」


「これ見よがしに置かれてる我が子の写真たちの前で、どうしろと?」


「……じゃあ、『寂しい店のバーテンダー』とか」


「知ってる?付き合ってはいけない『3B』って」


「そんなん偏見ですよ。試してみます?」


「ギムレットおかわり」


「意地悪やなあ」