「みんなおはよぉ〜」
いつもと変わらない朝。
志帆(しほ)おはよ」
「おっはー」
いつもと変わらない親友2人。
「お前今日さ、夜ヒマ?ゲームしようぜ」
「お、いいな!夜9時でいいか?」
いつもと変わらないクラスメイト29人。
「お前ら席つけー」
いつもと変わらない先生。
今日もいつもと同じ、学校生活の1ページ。
「出席とる前に、大事な話がある」
……なはずだった。
「お前らには、今日、授業をしない」


私は四葉志帆(よつはしほ)。滝川学園中等部2年B組。
篠山美空(しのやまみそら)藍田(あいだ)なぎさの2人が同じグループで、いつも一緒。
「みそらっち、なぎちゃん、おはようっ」
「志帆、朝から元気すぎー」
「あたしは朝練あったから全然余裕」
2人と笑いながら話していると、すぐにチャイムが鳴る。
ガラガラガラ……ッとたてつけの悪いドアを開いて、担任の先生が入ってきた。
「お前ら席つけー」
メガネをクイッと上げて、先生は口を開く。
「出席とる前に、お前らに大事な話がある」
そして、さっきの爆弾発言。
「お前らには、今日、授業をしない」
先生はくるりと黒板を振り返って。
カツカツとチョークで黒板に白い文字を刻んでいく。
「せんせぇ冗談いいって〜!」
「ま、いつもスベりっぱなしのせんせーには丁度いいネタだね」
「先生、ドッキリはもうおなかいっぱいだから〜!」
段々と騒がしくなるクラスメイトたち。
私は目で2人を交互に見つめた。
2人も同じことをしている。
「なにこれ……ドッキリじゃないの?」
そのうち、みんなの笑いが不安にすり変わっていく。
「せ、先生……?」
先生の書いた白いチョークの跡を目で追う。
『ルール説明』
ルール説明……?
そのとき、ウィィィンっと音をたてて、教室の上に着いているプロジェクターが降りてきた。
「え?だ、誰か電源入れた……?」
「いや、誰も触ってないだろ……」
「どういうこと?」
プロジェクターに映ったのは……黒いフードを目元まで被り、口元だけが覗いている人。
口角はにやにやしているわけでもなく、定規で線を引いたみたいにまっすぐ。
『こんにちは。2年B組のみなさん』
うわっ……なにこの声。ボイスチェンジャーでも使ってるみたい……。
「気持ち悪……」
顔をしかめて、そう口にする人。
「ドッキリ手ぇ込みすぎだろw」
そう苦笑をこぼす人。
「なんか、怖い……」
不安げに瞳を揺らす人。
『今からみなさんにはあるゲームをしていただきます』
ゲーム?
何を言ってるのこの人……。
すると、私たちに見せるようにフリップを置いてきた。
『シンユウかどうかを確かめ、選択して切り捨てろ! トモダチランキング』
トモダチランキング……?
「ふざけんなよ!俺はこんなの参加しねー」
声を張り上げたのは、普段から先生に対して反抗ばかりしている三上龍二(みかみりゅうじ)くん。
「こんなしょーもないことしてる時間あったら違うことするから」
そう言い捨てて、教室を出ようとする彼。
「彼の意志を確認。尊重したいのはやまやまなんだが……仕方ない」
何やらボソボソ呟いたなぁと呑気にそう思った瞬間。
バンバンバンッ!
大きな音が3回、教室に鳴り響く。
「……っ、え?」
先生……っ!?
先生の右手には、蛍光灯の光を反射して、鈍く黒色に輝くもの。
白くて細い煙と、火薬の匂い。
次の瞬間には、スローモーションのように倒れていく三上くん。
……赤い液体を額に浮かべて。
「きゃああああっ!!」
どっ……どういうこと!?
「三上!?」
「ウソだろ……おい龍二!?」
床に倒れ込んだ三上くんは、ぴくりとも動かない。
見かねた北條蒼空(ほうじょうそら)くんが、そっと三上くんの手首をとって、脈を見てくれた。
「……死んでる……」
ぽつりと呟いた北條くん。
「いやぁぁぁぁっ!!」
「おい、どういうことだよ!?」
「誰か助けて!!」
みんなあっという間にパニックに陥る。
私も、手が震えて止まらなくなってしまった。
どうしよう……どうしたらいいの。
『みなさん、落ち着いてください』
再び口を開いたフードの人。
『改めまして、私、ゲームマスターです。よろしくお願いします』
ゲーム、マスター……。
これから何が起こるの……?