「いいじゃん、潤。僕の奢りだからさ」


「また勝手に出したのかよ。ったく、お前の奢りはいつになったら店に還元されるのかね」


潤と呼ばれた男が大袈裟にため息を吐いた。


「まぁまぁ。今回奢ったって、結ちゃんがこれから常連さんになってくれたらウチも儲かるじゃん」


ヘラッと笑い、結に「また来てくれるよね?」と人懐っこい笑みを浮かべて尋ねた。


無邪気な表情に、ドキッと胸が高鳴った。


「え、えと……」


本当は、すぐにでも頷きたかったが、恥ずかしさからできなかった。


そんな結の様子を見て、潤がフッと鼻で笑った。


「ねぇよ。その子、桜宮の子だろ? そもそも、なんで桜宮に通ってるお嬢様がこんなところにいるんだよ」


小鳥遊は普通に話していたが、桜宮学園へ通っている人以外は潤のような反応をするのだ。


金持ちの子どもで、苦労なんてないと思われている。