「へぇ……ご両親は、そんなに早く継いだもらいたかったんですね?」
「継いでもらいたかったというか、継ぐしかなかったんだよね。ずっと店をメインでやってくれていた母が、1年前に亡くなって」
突然の訃報にピタリと手が止まった。
「あっ……ご、ごめんなさい。辛いお話をさせてしまって……」
「あー、いいのいいの。気にしないで、僕が言い出したらことだし」
気にしていない様子だが、甘い雰囲気に結が黙り込んでしまった。
そんな時、再びカランコロンと鈴の音が聞こえ、ぴくりと肩を上げた。
バッと振り返ると、男性と同じ服を着た男が立っていた。
男が結を見ると、目を丸くしていた。
「小鳥遊(たかなし)、定休日に客を入れるなって何度も言ってるだろ」
結を見たのは一瞬だけで、男の方をじろりと見た。
結にお茶を振る舞った男は、小鳥遊というらしい。