「ふわあ」
翌日女は目が覚めた。
「嘘! もう九時!? 遅刻しちゃう」
と、女は急いで着替えに取り掛かる。
「大丈夫よ」
そこに母親が現れた。
「私が休み連絡入れといたから」
「え? なんで?」
「あの状態で學校に行かせられないわよ。疲れてる様子だったし」
「でも」
「いいの。母親命令よ。休みなさい」
「はい」
「ところでなんで荒れてたの? 言いたくなかったら別にいいけど」
「いや、落ち着いたから言う。私ね好きな子がいたの。で、昨日告白して振られたの」
「そう」
母親はこう言う時の上手い話し方を知らない。母親は振られた経験などない。むしろ高校生活大学生活での付き合った経験自体がゼロなのだ。
「じゃあさ、もうその人しか好きにならないつもりだった? もう結婚するつもりだった?」
「それは……わかんない」
「だからさ、またそう言う人出てくるって」
「出てくるまで待てないよ。今は……高橋くんがその人だったんだから。また会えるとか言われても、会えない可能性もある訳じゃない? 無理だよ」
「無理じゃない、たったの70億人のうちの一人じゃない!」
「私にとっては一人じゃない!」
「まあ……私にはその涙をとがめる権利も何もないから。とりあえずご飯を食べなさい」
と、白ご飯と鳥のから揚げを机に並べる。
「食欲ない」
「食べたらすぐに食べれるようになるわ」
と、母親はその場を後にする。