放課後の学生たちが消え、静かなった空間に、二名の生徒がまだ残っていた。

「あの」

 二人のうちの女が男に話しかける。

「何?」

 と、男は待つそぶりを決めた。

「……私……」

 女はなかなか言葉を発しない。

「待つよ。いいたいことが見つかるまで」

 それから5分が経過した。男はまだ待っている。女はそんな男に報いようと、言葉を必死で探すが、なかなか見つからない。

「私……」

 女はついに言葉を見つけたようだ。

「高橋君のことが……」

 女は顔を赤らめ……

「好きです」

 そう言い切った。その瞬間男の顔も少し赤くなる。

「そうか……」

 男は考え込む。女はその光景を見て、ただ祈っているだけである。まるで自分の出来ることは全てやった。後は神様の匙加減だというように。

「俺は君のことをかわいいと思っている。性格もいいと思っている。いつもみんなにやさしく接していて、悪いところなんてないと思っている。ただ……」

 男はその次の言葉を言うことをためらっている。次の言葉を言えば、空気が悪くなるとわかっているからだ。だが、言わなければ次の段階には進めない。

「俺は君と付き合うのは無理だ」

 男はそう苦痛な顔で言い切った。告白を断るほうも勇気がいるものだ。一人の女性の心を傷つけることにもなるし、あとで文句を言われるかもしれない。だが、男にはもう彼女がいたのだ。

「さよなら」

 男は逃げるようにしてその場を去っていった。それ以上言及されたくは責めないで欲しいという思いで。