手には紙に包まれた丸い何かを持っていた。受け取って中を開けるとそこにはとても可愛らしい(うぐいす)の形をした和菓子がひとつ。

桜模様の和紙に包まれて、まるで小さな春が手の中にあるようだ。


「明日華さんが少しでも元気になるように作りました」

「名前、覚えていてくれていたんですか?」

「当然。明日華さんは私たちの大切なお客様の一人ですから」

「嬉しい。本当にありがとうございます」

「次に来た時は是非とも味の感想をお願いします。もっと貴方と話したい。私は…いえ、私たちはいつでもここで待っていますから」

「はい…!」


このとき気づいた。充さんは私の元気がないのを察してくれていたのだと。そして私を元気づけるために和菓子を作ってくれたのだと。