そこに、湯気のたつカップを載せたトレーを持ってイーヴが戻ってきた。甘くスパイシーな香りに、シェイラは思わずすんと鼻を鳴らしてしまう。

「身体が冷えた時は、これだ」

「わぁ、美味しそう! ありがとうございます、イーヴ」

 カップの中に浮かぶたっぷりのクリームは、まるでふわふわの雲のようだ。イーヴと一緒に見た空を思い出して、シェイラは幸せな気持ちになりながらカップを口へと運んだ。

「んんー! 甘くて美味しい!」

 柔らかなクリームの下には濃厚な紅茶が隠れていて、クリームと溶けてじんわりと混じり合っている。遅れて口の中に広がるスパイスのほのかな刺激が甘さに慣れた舌の上で弾け、シェイラは思わず頬を緩めた。

「口に合って良かった」

 小さく笑ったイーヴが、ぽんぽんとシェイラの頭を撫でる。そのぬくもりが嬉しくて笑顔でイーヴを見上げると、隣に座っていたルベリアが驚いたような声をあげた。

「あらぁ、何だか二人、すごく仲睦まじいわね?」

「え、あ、……えっと」

 揶揄うようなその声に急に恥ずかしくなって、シェイラは慌ててうつむく。赤くなった顔を見られないようにカップに口をつけていると、イーヴも困ったような表情で視線をそらした。

「別に、普通だ」

「ごめんごめん、揶揄ってるわけじゃないのよ。あなたたちの仲がいいのは悪いことじゃないもの」

 とりなすようにルベリアが言うものの、イーヴは仕事を思いだしたからと言って、逃げるように部屋に戻ってしまった。