「シェイラはもっと肉を食え。大きくなれないぞ」

 皿の上の肉を次々と食べながら、イーヴがシェイラを見る。あっという間に料理の大半がなくなっていき、そのスピードと量にシェイラは思わず目を見張る。

「私はもう成人してるので、これ以上背は伸びないと思いますよ」

「背は伸びなくても、もう少し肉をつけるべきだ。シェイラは細すぎる」

 そう言って骨つき肉を差し出されて、シェイラはお腹いっぱいだと首を振る。

 イーヴはそれならと言って、またレジスに何事かを命じた。笑顔でうなずいたレジスが持ってきてくれたのは、デザートのケーキだった。たっぷりとシロップのしみ込んだスポンジの上に、甘酸っぱい香りのベリーのソースがかかっていて、見た目にも鮮やかだ。



 皿の上に切り分けてくれたレジスが、仕上げとばかりにクリームとチョコレートでデコレーションしてくれるから、その可愛さに思わず小さく歓声をあげてしまう。

 華やかな見た目と甘い香りに、お腹いっぱいだと言ったはずなのに食欲がわいてくる。

「甘いものは、別腹だろう」

 悪戯っぽく笑ったイーヴに、全て見透かされている気持ちになりつつも、シェイラはうなずいてフォークを手に取った。

 ベリーの酸味がしっとりとしたスポンジの甘さを引き立てて、いくらでも食べられてしまいそうだ。

 マリエルがこっそり分けてくれたお菓子も美味しかったけれど、隠れることなく堂々と食べられるのは嬉しいものだなと思う。

「美味しい……。美味しいものを誰かと一緒に食べるのって、幸せですね」

 嬉しくて緩む頬を押さえながらそう言うと、イーヴが優しく笑って頭を撫でてくれた。そばに控えるレジスも穏やかな笑みを浮かべて見つめていて、シェイラは心がほかほかするような気持ちになった。