「寝る前にお邪魔して、ごめんなさい」

 半分ほどホットミルクを飲んだあと、シェイラはカップを置いてイーヴを見上げた。隣でグラスに注いだお酒をちびちびと飲んでいたイーヴは、問題ないと言って首を振った。

「故郷を離れて心細い気持ちもあるだろう。シェイラさえ良ければ、今夜はここで寝ていいぞ。あとで部屋に運んでやるから」

 優しくぽんと頭を撫でられて、そのぬくもりに嬉しい気持ちになりつつ、シェイラは姿勢を正して座り直した。



「いえ、今夜お邪魔したのは、初夜だからです」

「しょや……初夜?」

 きょとんとしてシェイラの言葉を繰り返したイーヴは、一瞬でその意味を理解したようで、驚きに目を見開いたあと、激しく咽せ始めた。

「なん……で、そんな、ことを」

 動揺したように視線を泳がせるイーヴに詰め寄って、シェイラはまっすぐに見つめる。

「私は、イーヴの花嫁としてここに来たからです」

「いや、それは形だけだと言っただろう」

「だって、このままではイーヴにもラグノリアの皆にも申し訳ないです。せめて、花嫁としての務めを果たさせてください」