食堂で、シェイラはひたすらにテーブルの上を見つめていた。心を無にして、目の前に並ぶ金色のカトラリーの細かな模様を視線でなぞる。

 そうしていないと向かいに座ったイーヴと目が合いそうなのだ。観察するように、じっと視線を向けられているのを感じて、どう反応すればいいのか分からない。



 エルフェに手伝ってもらって着替えをしたあと、シェイラは広すぎる部屋で落ち着かなく過ごした。身体を柔らかく包み込むようなソファはとても座り心地が良かったし、エルフェが淹れてくれたお茶も、こんなに香り高く味の濃いお茶は初めてだと思うほどに美味しかった。

 だけど、これまでのラグノリアでの生活との落差が激しくて、気持ちも身体もついていかない。生贄となるはずだった身なのに、分不相応な扱いを受けているのではという思いがどうしても頭から離れないのだ。

 リラックスできないまま過ごしていると、日暮れと同時にエルフェが夕食の時間だと声をかけてきた。

 部屋で一人で食事をとるものだと思っていたのに、案内された先はこれまた豪華な食堂。そこで待っていたのはイーヴで、シェイラと一緒に食事をするという。

 テーブルは広く大きくて、向かいに座ったイーヴとの距離もかなりある。それでもじっと見つめる金の瞳は何を考えているのか分からなくて、シェイラはうつむいて視線を落とすことしかできずにいた。