「こんばんは、イーヴ」

「シェイラ? どうした、こんな時間に」

 驚いたようにドアを開けてくれる彼は、やっぱり優しい。扉を閉められないようにすかさず半身を部屋の中に滑り込ませると、シェイラはにっこりと笑ってイーヴを見上げた。

「一緒に寝ようと思って、来ました」

「え? いやいや、シェイラ。前にも言っただろう、一緒に寝る気はないって」

 困ったように眉を顰めてだめだと言ったあと、イーヴは少し心配そうな表情で首をかしげた。

「……もしかして、怖い夢でも見たか」

「違うもん」

 心配してくれるイーヴは優しいけれど、やっぱり子供扱いされているような気がする。怖い夢を見てひとりで眠れないなんて、そんな幼い子供じゃないのにと思わず唇を尖らせて、シェイラは胸を強調するように腕を組んだ。

「イーヴと一緒に寝たいだけなの」

「そんな格好しても、俺は落ちないからな」

 ちらりと胸元に視線をやったイーヴは、ため息をついて頭をかくとソファの上にあったブランケットをばさりとシェイラにかぶせる。少しはイーヴを動揺させられるかと思ったのに、呆れたような表情を向けられてしまった。

「じゃあ、どんな格好をしたらイーヴは落ちるの? どんな子が好み?」

「さあな。今は、素直に部屋に戻って寝てくれる子が好きだけど」

「うぅ……だって」

 このままでは部屋に送り返されてしまいそうなので、シェイラは一生懸命足を踏ん張った。きっとイーヴがその気になれば、ひょいっとかつぎ上げられてしまうだろうけど。