水都の母親は、私たちが遊ぶのを複雑な表情で見ていた。

「あの子、友達と遊べるのね。今行っている幼稚園では、いつも一人でいるんです」
「ゆらりちゃんは明るいし、優しい子ですから。気が合うんでしょうね」

 先生の受け答えに、私はニカっと笑った。

「ミナトくんも優しいよ!」

 隣にいる水都に、同意を求める。

「ミナトくんと友達になりたい。いい?」
「ん」
「やったぁー! みなっちで呼んでもいい?」
「ん」
「ありがとう!」
「ん」

 水都には、はっきりとした表情の変化がなかった。それでも目の動きや、少し緩んだ口元から、私と友達になることを嬉しく思っているのが伝わってきた。

「みなっち、明日も来る?」
「ごめんなさい。明日は用事があって、来られないの。それに水都は、別の幼稚園に通っていて……」

 水都の母親が即座に謝った。
 その途端、水都の表情がキリッとしたものに変わった。母親を見上げ、毅然とした口調に変わった。

「ボク、明日からここに通います」
「え……」
「お母様は、用事をしてください。ボク、一人でここに来ます」
「え、でも……」
「道は覚えています。一人で来られます」

 無口だった男の子の、いきなりの豹変。私も先生も目を丸くした。
 私は水都の両手を取ると、左右にぶらんぶらんと大きく振った。

「みなっちって、出来る男! かっこいい!!」
「……ん」

 水都の色白の顔が真っ赤になった。照れているのが可愛かった。