一時間目は英語。
 水都の席は、廊下側の前から二番目。私の席は、廊下側から三列目の、前から四番目。
 そういうわけで、水都の整った横顔を観察できる。
 スッと上がった眉毛と、目尻が上がったねこ目。長くてふさふさの睫毛に、綺麗な鼻筋。薄くも厚くもないちょうどいい唇。
 口の悪い男子が「整形してまで、女にモテたいのかよ」と陰口を叩いていたのを聞いたことがある。
 つまりそれほどに、水都は顔がいい。肌はきめ細やかで、どんな手入れをしたらつややか卵肌になれるのかご教授願いたいほど。
 黒髪は無造作だが、そのラフさがかっこいい。

 笑ったらもっとモテると思うのに、水都は基本的に無表情。
 魅音は水都のことを、クール系不思議男子に分類している。

「なにを考えているのかわからないし、口数が少ないじゃん。明るい性格か暗い性格なのかも、わからない。でも、そのミステリアスさがかっこいいけれど!」

 私は付き合いが古いので、水都は明るい性格と暗い性格の中間に位置していると思っている。
 初めて出会ったときのことを思い出す。水都は、トトロの映画に出てくるカンタみたいだった。「ん」ばっかり言っていた。
 水都を見ていると、思ってしまう。今までも何度も、思ってきた。

(もしもあのとき絶交しなかったら、どうなっていたのかな……)