小学一年生のとき。同じクラスの男の子に恋をした。名前は、由良水都くん。私の王子様だと確信した。
 私は可愛いものが大好き。特にプリンセスグッズが大好きで、誕生日やクリスマスには、祖父母と両親から、お姫様のドレスやティアラや可愛い靴などをもらった。
 私は由良くんと友達になりたかった。だって、お姫様にはとびきりに素敵な王子様が必要でしょ。
 誕生日会に誘ったのに由良くんは、「そういうの苦手だから」と困った顔をした。手作りの招待状を受け取ってくれなかった。両親は気に留めなかった。

「女の子の家にくるのが恥ずかしいんでしょう」

 納得できなかった。だって、聞いてしまった。

「お母さんが、ボクの誕生日会をしたいっていうんだ。友達を連れて来てって。ゆらりちゃん、来てくれる?」
「いいよ!」

 ねぇ、由良くん。変じゃない? 女の子の家に行くのは恥ずかしいのに、自分の家には女の子を呼ぶわけ? それも、鈴木ゆらりっていうダサ子を招待するなんて変。
 私は由良くんに迫った。

「由良くんの誕生日会。私も行ってあげる」
「ごめん」
「ごめんってなに? どういうこと?」
「……来るの、一人だけでいいんだ……」

 はしゃいでいた心が、すぅーと冷えた。王子様に断られた……?

 鈴木ゆらりを観察する。ブスではないけれど、飛び抜けて可愛いわけじゃない。私のほうが数倍可愛い。
 プリンセスにはほど遠い、鈴木ゆらり。 
 同じ服を着て来ることが多いし、その服はシミが付いていたり、袖口の糸がほつれていたり、洗濯のしすぎて縮んでいたりする。貧乏って感じ。
 母に聞いたら、「鈴木さんのお母さんって、子育てに熱心ではないみたい。変わった人なのよね」と言葉を選んでいるみたいだった。

 貧乏ダサ子が王子様に好かれるなんて、変。おかしい。生意気。
 私は鈴木ゆらりをいじめることにした。その結果、由良くんと絶交させるのに成功した。
 いい気味だ。ダサい貧乏人が調子に乗って、「みなっち」なんて呼ぶからだ。私の王子様にダサいあだ名をつけないでほしい。

 私は由良くんと恋人になる日を夢見た。しかし残念ながら、由良くんは私立中学に行ってしまった。
 私は由良くんのことを忘れ、サッカー部の前田くんに夢中になった。前田くんとはいい感じになったけれど、子供だった。男友達と遊ぶほうが楽しいと言われてしまった。

「同級生ってガキなのよねぇ。やっぱり、年上じゃないと」

 高校に入ったら、素敵な先輩と恋するぞ! 
 たとえば、野球部の谷先輩とか。顔はそこそこだけれど、プロ野球入りするかもしれないと噂されている。野球に興味はないけれど、有名人の彼女っていいよね!
 そんな期待に胸を躍らせていたら、運命的な再会を果たした。