レジから客が途絶えた途端。バイト仲間のお姉さんがいそいそと寄ってきた。なぜか満面の笑顔。

「アイドルみたいな美形と、親しげに話していたよね⁉︎ 友達?」
「同じクラスの人です」
「同じクラス⁉︎ いいなー、羨ましいっ! 超楽しい学校生活じゃない。学校に行くのが楽しいでしょう? 私もあんなイケメンと机を並べてみたかった。青春ねぇ」

 お姉さんは大学生。名前は、伊藤美月さん。私と四歳しか違わないのに、やけにしみじみとした口調で話すのがおかしい。
 伊藤さんの目は、好奇心でキラキラと輝いている。

「付き合っているの?」
「違いますっ!」
「片想い……って感じじゃないよね。脈アリに見えたもん。付き合う一歩手前って感じ?」
「全然違います!!」
「ふ〜ん。そうなんだぁ」

 伊藤さんは納得したようなことを言いながらも、口ぶりも表情も納得していないようだった。
 含み笑いしながら、肩をコツンとぶつけてきた。

「紙をもらっていたよね? お姉さんに見せなさい!」
「そういえば……」

 制服のポケットから、四つ折りになっている紙を取り出す。伊藤さんに見られながら、ベージュ色のメモ紙を広げる。

『今度の土曜日、護摩神社で会いたいです。大切な話があります』

 伊藤さんは、はしゃいだ声をあげた。

「きゃあーっ! 告白されるんじゃない? ついに、ゆらりちゃんに彼氏ができる。しかも超美形! 羨ましいーっ!!」
「違いますってば!!」

 懸命に否定しながらも、頬が熱くなるのを止められない。