ロッカーについている鏡でおさげを結び直していると、店長が事務所に入ってきた。

「店長、正直に答えてほしいことがあります! お世辞とかいらないです。外見のレベルを一から十で表すと、私ってどれくらいですか?」
「うーむ、難しい質問だ」

 店長はお腹が突き出ている。棚にお腹を当てながら、事務所の奥へと進んだ。パソコンの前に座ると、キャスター付きの椅子がギシッと鳴った。それから、私をまじまじと見た。

「……七ってとこかな?」
「中の上ですか! すごい!!」
「自分は熟女好きだから、高校生はちょっと……ってだけで、ゆらりさんを可愛いと思う男子は結構いると思うよ。優しい性格が顔に出ている。付き合うなら、性格の良い子が一番。どんな美人でも見飽きるときがくる。美人は観賞用、実際に付き合うのは性格の良い子。これ、バツイチの俺からのアドバイス」
「店長ってバツイチなんですか?」
「あれは遠い昔。俺がまだスリムな体型だったとき……って、聞きたい?」
「聞きたいけれど、時間が……」

 時計の針が五時に迫っている。
 店長は、「そりゃ、残念だ」と感情のこもっていない声で惜しんだ。本気で話す気はなかったらしい。

「おじさんから有益なアドバイスをあげよう。ゆらりさんは十六歳。成長期にある。今はレベル七だが、上昇する可能性が大いにある」
「本当ですか⁉︎」
「うむ。一年後に、もう一回同じ質問をして。九って言っている未来が見える」
「わー、嬉しい!」
 
 店長は私の父より年上。けれど、ユニークな人柄で話しやすい。
 店長のおかげで、私は笑顔で店内に出ることができた。


 夕方のコンビニは忙しい。レジを気にしながら、手が空いたときには、品物を補充したり前出しをする。
 メインのレジは、大学生のお姉さんが入っている。
 私は陳列棚に並んだお弁当を整えながら、キャンペーンになっているブリトーを推奨する。

「ブリトー全品が三十円引きとなっていますー。いかがでしょうかぁー」

 レジが混んでいないか確認するために、顔を横に向ける。
 すると、よく知った顔がそこにあった。

「うわっ!!」

 思わず、叫んでしまった。
 そこにいたのは──水都だった。