私が鈍感? 水都は恋の病にかかっている? 水都には好きな人がいて、それで悩んでいる? 
 頭の中を、いくつもの疑問符が飛び交う。

「で、でも、そんなふうには全然見えないんだけど……」
「だよねー。水都くんってクールだから、顔に出さないもんね。水都くんのSNSを見て、思い詰めるほどに好きなんだって知って感動した。うちも恋したい! っていうか、激しく愛されたーい!!」
「あのー……」

 発した声が掠れている。
 どうやら、私は緊張しているらしい。その緊張に、動揺が混じっている気がする。
 ゴクンと唾を飲み込んだ。

「誰が好きなのかな……」
「はぁ? それ、本気で言っている?」
「うん」
「ゆらりはポンコツだなっ!」
「なになに、どういうこと⁉︎」

 オロオロしていると、魅音は「鈍感なる女、めんどくさし!」と、ふくれっ面をした。鞄からスマホを取り出して、指を滑らせていく。

「水都くんがはっきりと書かないことを、うちが言うわけにいかないじゃん。でもなー。うちは二人の恋のキューピットになるって決めたから、お節介を焼いてあげましょう!」
「う、うん……」

 魅音は、【ん】さんのつぶやきをスクロールした。

「誰のことを考えながら、つぶやいているかってことだよね。……まず、これね。昨日のやつ。ゆらりは昨日、みなっちに何したんだっけ?」
「えっ? あぁ、えっと、謝ろうと思って後をつけました。できなかったけど……」
「うんうん。これが、そのつぶやきだ。【後ろにいて、ドキドキした】【気になる。なんだったんだろう】。尾行したのが、バレていたってわけだ」
「それはない。別のことが気になったんだと思う」
「なぜ断定できる?」
「だって、一度も振り返らなかったもん。後ろを見ないのに、わかるわけない」
「カーブミラーとか、店のガラスとかに映っていたんじゃない?」
「あっ……」

 水都は敏感だし観察眼もあるから、あり得そうだ。