ある日。私はもどかしくなって、水都の手を引っ張った。

「みなっちがいないとつまんない! 一緒に遊ぼう!!」
「でも……」
「なに?」

 水都はもじもじと顔を赤くした。

「ボク、迷惑じゃないかなって……」
「どうして?」
「邪魔しちゃ悪いかなって……」

 意味がわからなかった。水都もはっきりとは言わなかった。ただ、耐えるように唇を噛んで、首を横に振っただけだった。
 小学生になってこの場面を思い出したとき、ハッとした。
 水都は、他人の視線や感情に敏感だった。
 私と一緒に遊んでいた友達の、目。その目にあった嫌な感情を読み取って、遠慮したに違いないと思った。
 私は友達に、水都も一緒に遊んでいいか、聞かなかった。聞く頭がなかった。
 私は友達の気持ちにも、水都の気持ちにも鈍感だった。

 私は五月十日生まれ。水都は三月十七日生まれ。同じ年中でも、私たちの間にはだいぶ差があった。
 私はお姉さん気取りでいたけれど、実際は水都のほうが精神年齢が上だった。