「クチュリエはフランス語で男性の裁縫師(さいほうし)って意味だよ」

「裁縫師?」

「そこは私も詳しくないけど、専門用語だし。服を作るために布を切って縫って仕立てる…みたいな?」

そこはすごく服飾科らしい、もっとイケメンとかそーゆう系の言葉かと思ってた。てことはきっとフランス留学も服の勉強で行ってたんだろうなぁ。

「つまり、それほど優秀ってことね!この学校でそう呼ばれるくらい高い技術力を持った人ってこと!」

ぴんっと人差し指を立てた実彩子が隣でたじろぐ私を見た。

「南乃が知らないだけで、田所一成はすごい人なんだよ」

「う、うん…よくわかった」

クチュリエも初めて聞いたけど、裁断師だって初めて聞いた。

普通科の私には全く知らない。

ほんのちょっとの情報なのにどれも逸脱しててとてもじゃないけど一気に飲み込めない。てゆーか飲み込めるわけない。


どうしてそんな人が私に…!?


「なんで私に専属モデルなんか言い出したの!?」

「それは知らないよ、クチュリエに聞かないと」

「専属モデルって何なの!?」

今の話を聞けばモデルの意味はなんとなくわかった。モデルをしてほしいってことなんだろうけど、わからないのはそれをどうして私に頼んだかっていうこと。

しかも専属!なぜ私が属するの!?

「まぁそれはわかんないけどさ、ただ1つわかったことは…」

実彩子がハァと息を吐いた。重くどっしりとした息を吐いて、ゆっくり口を開く。

「全女子を敵に回したってことね」

「いらない!そんな人生いらない!!」