何段にも重なったボリュームたっぷりの丈の長いドレスに10センチ以上あるヒール、だけどはやる気持ちと興奮を押され切れなくて構わず走り出しちゃったから…

「危ねぇーなっ!怪我したらどーすんだ!?」

「ごめんなさい…」

転びそうになる私を抱き留めてくれた、一成が。

「ここで怪我したら意味ねぇーだろ!そうゆうの考える頭ねぇのか!?」

「すみません…」

「マジでふざけんな…っ」

「…っ」

「…。」

ハタッと目を合わせる。

あまりの距離の近さに、ドキッと心臓が音を出しちゃって。


また、ドキドキし始める…

これはさっきのドキドキとは違う、目の前に一成がいるから。


背中を支える一成の腕に体温を感じて、あと数センチの距離にもどかしさを覚えて。

スポットライトの当たらないステージの袖、誰にも見られないように…


近付いた。


どちらともなく、目を閉じてお互いを求めるようにキスをした。


これといって趣味もなければ特技もない、目立つようなことは何ひとつない人生だった。


このまま生きていくんだと思ってた。

これが私だと思ってた。


一成に会うまでは。


あの日から変わってしまった私の世界はもう戻らない、戻れない。



出会ってしまったら…

もう抜け出せない。