震える私の手に、一成の手が重なった。
大きな手、ぎゅっと握って震えがわからなくなるぐらい強く握って…

「ナノ…」 

「ごめん…、ちょっと怖くなっちゃった」

でも顔は上げられなかった。一成の顔が見られなかった。

「会場すごいし、モデルの子たちみんな可愛くてキレイだし…っ」

泣きそうになる、まだ何もしてないのにまだ何も始まってないのに…

でもすごくて、とにかくすごくて。
こんなの見せられちゃったら怖くなっちゃうよ。

何よりすてきなドレスを目の前にしたら。

怖くて、震えが止まらない…!

「がんばったよ、ナノは」

いつになく柔らかい声だった。

「やるって決めてから絶対に弱音を吐かなかった。練習だってきつかっただろうし、俺の言うことだって聞きたくねぇことあったと思う…あんま加減とかわからねぇしな」

私の手を包み込む手が優しくて、どうしよう本当に泣きたくなっちゃう。

「でもナノはついて来てくれた」

これ以上下を向いていたら涙がこぼれてしまいそう、でも顔を上げてもきっと泣いてしまうよ。

それでもいい?今だけは、この時だけだから…

「だから、諦めんな」

目を細めて笑う、その瞳は私だけを見てる。切れ長の目がほころんでる。

涙がポロッとこぼれ落ちて。