「それにあんだけ言われるのも癪だし!」

「……。」

「本番では絶対見返してやるんだから!黄色い声援私が搔っ攫ってやる!!」

フンッと鼻を鳴らして、グッの握りしめた手に力を入れてパイプ椅子から立ち上がった。

練習だ!
もっと練習して、あとは筋トレもして…

「…ふっ」

「え…、今笑った?」

「いや、別に…ふっ、ふふっ」

「笑ってるよね!?」

右手で顔を覆って俯いて、でも体は小刻みに揺れて。

くすくす声漏れちゃってるし!

「なんで笑ってるの!?」

「だって、お前…ははっ、はははっ」

ねぇって腕をトンッてしたらもう堪えることなく声を出して笑い出した。お腹押さえて、大きな口を開けて、そんな子供みたいに…

笑うんだ、一成も。

「ちょっと笑い過ぎじゃない!?私は本気でっ」

「俺も本気だ」

「…!」

その瞬間顔が変わったようにキリッと眉を吊り上げた。

「だからよかった、ナノに期待して」

「…。」

「ううん、期待以上だ」

フッと右の口角を上げる。

「いい目してたよ、そんな女は嫌いじゃない」

私の前に立って、上から私を見て。

「むしろ好き、だな」

くすっと笑う表情が、ドキッと脈を打って心の奥から声を出すみたいに。