「怪我してないか?」

「うん…、怪我はしてない大丈夫」

アトリエまで来てパイプ椅子の上に腰かけるよう下ろされた。ハイヒールの脱げた方の足を一成が触って、心配してくれてる。

足なんか触られたことないからドキドキしちゃって、さっきよりも恥ずかしいかもしれない。

さっきもあれだったんだけど、あんな思いっきり行くとは自分でも…


いや、やっぱあれも恥ずかしい…!

もうあんな…っ


「ナっ」

「ごめんなさい!」

「…ナノ?」

パイプ椅子の上に置いた手をぎゅぅっと握りしめて、頭を下げる。

「ごめんなさい…、私…っ」

全然できてなかった。あれだけ練習したのに、ささいな声に気を取られて歩けなかった。

でも所詮、私はそんなもんで。クチュリエのモデルなんて無理だったんだよ。

「…その謝る、意味は何なんだ?」


このままの私じゃ…!!!


「絶対歩いてみせるから!」

「!」

顔を上げて一成の顔を見た。目に力が入る、入り過ぎちゃって開き過ぎちゃうぐらいに。

「失敗してごめんなさい!でもわかったの、このままじゃダメだって!もっと周りを意識して歩かなきゃって!」

今まで誰もいないとこでしか歩いたことなかったからわからなかった。

そうだよね、学祭ファッションショー本番はたくさんのお客さんが来るんだ、あんなもんじゃない。あれぐらいで怯んでたらランウェイなんて歩けない。


それを一成は教えてくれたんだ。