―ドンッ 

踏ん張り切れなかった。脱げたハイヒールが転がって行った。

「ナノ…!」

は、恥ずかしい…!
やっちゃった、思いっきり転んじゃった!!

「大丈夫か?」

ジャージだったからまだよかったけど、見られてる中で尻もちをついたのは恥ずかしい…

「ナノ」

一成が駆け寄って来てしゃがみ込んだ。大きな体をかがませて私の顔を覗き込もうとする、だけど前が見られなくて塞ぐように下を向いた。

どうしよ、やっちゃった…
失敗しちゃった、私…っ

ガヤガヤ声が聞こえる。聞きたくないけど聞こえて来る。

「うわ~、可哀想」

「調子乗ってるから!」

「ダサッ」

「つーかもっと痩せた方がよくない?」

言いたい放題みんなの声が、全て耳に入って来るから。

刺さる、1個1個の言葉が全部…


「あんな子がクチュリエのモデルをしようなんて無理に決まってるじゃん」


胸に刺さる。

こんなとこで何やってるんだろう私、どうしてこんな…


こんなこと…!



ふわっ 

と突然体が軽くなった。


「え…?」

急に体が浮いて視界が明るくなった、一成に抱き上げられて。

な、なに…!?


「「「「キャーーーーーーっ」」」」」


女の子たちの絶叫する声が廊下中に響き渡る。

これは絶対また敵増えた!確実に睨まれてる!

でも一成はそんなことお構いなしに、私を抱き上げたまま走り出した。